ホテルの空調が「強・中・弱」しかない理由とは?【セントラル空調の問題点】

エアコンのしくみ

ホテルに泊まると、エアコンのスイッチが「弱ー中ー強」しかないことがあります。

「今どき温度設定もないなんて!なんで!?」と思った方もいるかもしれません。

当記事では”ホテルの空調がなぜ風量調整しかできないのか?”というテーマで、セントラル空調とは何かデメリットについて解説していきます。

「セントラル空調」とは?大型施設やホテルではしくみが異なる!

このようなスイッチがついている施設では、セントラル空調という方式が採用されています。

熱源機とファンコイルユニットで冷温水をやり取りし、空調を行う。
セントラル空調のしくみ(三菱電機ホームページより)

セントラル空調とは、機械室で作った冷水・温水(「冷温水」といいます)を使って、空調を行う方式のことです。

機械室にある大型の機械で大量の冷水や温水をつくり、ポンプで各部屋に送ります。

各部屋にある「ファンコイルユニット(FCU)」という機械で、送られてきた冷水や温水に風を当てることで冷暖房を行っています。

エアコンは冷媒というガスを室内機~室外機でやりとりする必要があり、配管の長さに制限があります。セントラル空調では水のやり取りで済むため、配管長に制限が生じません。このため大規模な施設ではセントラル空調が採用されることがあります。

セントラル空調では部屋ごとの温度調整が苦手!

ファンコイルユニット

住宅で採用されるルームエアコンは、熱源の温度を調整しながら厳密に温度を調整することができます。

しかし、セントラル空調では機械室から送られる一定温度の冷温水をもとに空調を行うため、厳密な温度調整ができません。

ファンコイルユニットは風量調整しかできない

風量を切り替えるくらいしか設定ができないんですね。

そのため、セントラル空調を採用したホテルやビルでは、風量調整のみのスイッチが取り付けられているわけです。

セントラル空調では部屋ごとに冷暖房を切り替えられない!

「部屋ごとに冷暖房を切り替えられない」こともセントラル空調の欠点です。

ホテルやビルでは、部屋によって室温に差が生じることが往々にしてあります。夏でも暖房が必要になったり、冬でも冷房が必要になったりすることがあります。

セントラル空調では機械室で一括で冷水・温水をつくるため、部屋ごとに冷暖房を切り替えることが原則できません。

FCUコントローラーの導入で温度設定が可能に!

原理的にしかたないとはいえ、さすがに3段階の風量調整しかできないのは困りますよね。

そこで最近ではFCUコントローラーという装置を導入し、精密な室温調整を可能にする施設も増えています。

ファンコイルリモコン(アズビル製「ネオパネル」)

FCUコントローラーとは、電磁弁や送風機をコンピューター制御することで、本来風量調整しかできないファンコイルユニットをエアコン並みに仕立てるための装置です。

FCUコントローラーを導入するメリット
  • 多機能リモコンでかんたんに温度や風量を設定できる
  • 電磁弁により冷温水の流量を変えることで、ムダを防げる
  • 集中管理コントローラーと連携できる
  • 人感・在室センサーと連携して、省エネに貢献

こうした設備を導入することで、既存の空調システムを活かしつつ、省エネ・快適性を向上させることができます。

まとめ

なぜホテルのエアコンは風量調整しかできないのか?

それは「セントラル空調という、一般的なエアコンとは異なる空調システムが採用されているから」です。

セントラル空調は厳密な温度調整ができず、冷暖房の切り替えも個別に対応することができません。

さらに大型の熱源機(チリングユニット・冷温水発生器・ボイラーなど)を運用するため、莫大なランニングコストもかかります。

最近はルームエアコンを取り付けるホテルが増えていますが、こうしたセントラル空調の欠点が理由だったりします。

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