今回は電気工事士試験にも出題される「リモコンスイッチ(ワンショットリモコン)」について解説していきます。
リモコンスイッチは施設向けの電気工事では必ずと言っていいほど遭遇する設備のひとつです。しかし、一般家庭には採用されることが少ないことから、イメージがわかない方も多いと思います。
そこで当記事では、

「リモコンスイッチって、どんな仕組みなの?」
「リモコンスイッチのメリットがあるの?」
「リモコンスイッチってどんなときに使われるの?」
といった疑問に、初心者の方にもわかりやすく答えていきます!
「リモコンスイッチ」とは?
リモコンスイッチとは、「スイッチを、リモコンのようにさまざまな場所から操作できるようにした設備」のことです。

スイッチ本体は、配電盤などに設置しておきます。

そこに操作部をつなぎ、スイッチ本体を遠隔操作します。

スイッチ(パナソニックHPより)
なぜ「リモコンスイッチ」が必要とされるのか?柔軟な回路設計が求められる
リモコンスイッチは、商業施設から病院・公民館など幅広い施設で使われています。
なぜリモコンスイッチが使われるのでしょうか?一般的な住宅との対比で考えてみましょう。
一般住宅では、ふつう電灯のスイッチは1対1で設置されます。

例えば、リビングの電気があるとすると、リビングに1つスイッチが設置されます。
階段では複数のスイッチを設置することがありますが、せいぜい数カ所あれば十分でしょう。
しかし、商業施設などの大規模な建物では、こうはいきません。1つの電灯に対して大量のスイッチを設置したいときがあります。

例えば、お店の照明スイッチを考えてみましょう。
レジ周りに1つ、バックヤードに1つ、警備員室に1つというように、同じ電灯に対して複数のスイッチを設置したいことが少なくありません。
逆に「1つのスイッチで大量の照明を一括制御したい」ときもあります。

ワンフロアすべての照明を一括制御したいときや、体育館などの数十個の水銀灯を一気にON/OFFしたいときなどですね。
これらの組み合わせにしたいときもあります。一括制御もしたいし、個別に制御したい場合だってあります。

遠方にスイッチを設置したいときもありますね。

テナントごとのほか、警備員室にも照明のスイッチを設置したいといったケースです。遠方で照明を制御したいニーズはあります。
間取りを変えた場合など、制御したい照明を後から変更したいというケースだってあります。
このように施設用の照明はさまざまな制御方式を求められます。
1つのスイッチでたくさんの器具を入切したり、一つの器具を複数スイッチで入切したり。
住宅で複数箇所にスイッチを取り付けたいときは、三路スイッチや四路スイッチが使われますが、スイッチの数が増えると、回路が複雑になってしまいます。
こういうときに便利なのが「リモコンスイッチ」です!
リモコンスイッチを使えば、配電盤に設置したスイッチを複数の場所から遠隔操作することができます!柔軟な設計が可能です!
「リモコンスイッチ」のしくみ 「リモコンリレー」と「リモコンスイッチ」
リモコンスイッチの構成部品は「リモコンリレー」「リモコンスイッチ」の2つです。
リモコンスイッチのポイントは「スイッチ本体と操作部を分けた」ところにあります。
①リモコンリレー(スイッチ本体)

②リモコンスイッチ(操作部)

スイッチ(パナソニックHPより)
「リモコンリレー」と「リモコンスイッチ」
まず、主役となるのが「①リモコンリレー」です。

リモコンリレーはいわば”スイッチ本体”になります。配電盤に設置し、回路をON/OFFします。
リモコンリレーには「コイル(電磁石)」と「電磁石でON/OFFできるスイッチ」が入っています。
電磁石に電流を流すと、スイッチがON/OFFします。結果、照明を付けたり消したりすることができます。
この「①リモコンリレー」に「②リモコンスイッチ」を接続します。

リモコンスイッチは操作部にあたります。
リモコンスイッチのボタンを押すと、リモコンリレーの電磁石に電流が流れます。押すごとにリモコンリレーがON・OFFし、照明を入れたり消したりすることができるわけです。
リモコンスイッチを使うメリットとは?
スイッチ本体と操作スイッチを分けることで、さまざまなメリットが生まれます。
リモコンスイッチなら大量のスイッチを設置できる
リモコンリレーにはたくさんのリモコンスイッチを接続できます。
スイッチは並列でリモコンリレーに接続すればOKです。
大量のスイッチが必要な場合でも、三路スイッチや四路スイッチを使った構成に比べ、回路をかんたんにすることができます。
複数箇所の照明を1つのスイッチで操作することもできる
逆に複数の回路を一括でコントロールすることもできます。
例えば、ホール全体の照明を1つのスイッチで制御したい場合を例にとってみましょう。
通常のスイッチは電流値に上限が定められています。よって、1つのスイッチで制御できる負荷の数には限界があります。
一方、リモコンスイッチなら、1つのスイッチを複数のリモコンリレーに接続することができます。1つのスイッチでたくさんの照明のON/OFFを一括で行うことが可能になります。
水銀灯など大きな負荷にも対応できる
一般的なスイッチで対応できない大きな負荷にも対応できます。
大量の水銀灯などを一括制御することができるようになります。
オートメーションにも対応できる
リモコンスイッチを導入することで、コンピューターやセンサーで照明を制御することも可能になります。建物の設計に柔軟に対応することができます。
まとめ
今回はリモコンスイッチについて解説してみました。
電気工事士試験にも出題されることがあるリモコンスイッチですが、普段目にすることが少ない設備のため、なかなかイメージしづらいところがあると思います。
ポイントは「スイッチ本体と操作部をわけた」という点です。これにより多様な設計に対応しやすくなるのが、リモコンスイッチの肝です。
ここまで説明してきたのは「ワンショット方式」というリモコンスイッチの仕組みです。

電気工事士で出題されるリモコンスイッチは「ワンショット方式」です。
最近ではリモコンスイッチとリモコンリレーを2本のケーブルでつなげる「フル二線式リモコン」が主流となっています。

これまでのリモコンスイッチは、リモコンリレーとリモコンスイッチのボタンを1本ずつ配線する必要があります。
これだと、リモコンリレーやスイッチの数が増えると、配線が比例して増加してしまい、配線スペースや施工性が低下してしまう問題がありました。
フル二線式リモコンなら、リモコンリレーとリモコンスイッチを2本の線でつなぐだけでOKです。
エアコンのリモコンと同様にマイコンで通信を行うこと(多重伝送)で、複雑なスイッチ構成でも配線の増加を避けることができます。
スイッチと対応する回路の組み合わせも、配線の変更なく自由にカスタマイズできます。専用コントローラーを用いて、かんたんにセットアップができます。

「多重伝送」システムは、もともと観光バスで広く使用されていました。
観光バスにはたくさんの車内灯があり、1つ1つスイッチと結線していると大量の配線が必要となります。運転席のスイッチと客席のリレーボックスを多重伝送でつなぐことで、配線の削減に貢献しています。
画像出典:パナソニック株式会社ホームページ

 
  
  
  
  
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