今回は水熱源ヒートポンプエアコン「ピーマック(PMAC)」について解説します!
はじめて聞いた方もいるかもしれませんが、実は東京駅をはじめとするさまざまな大型施設で多数の導入実績がある業務用空調のトップメーカーです。空調工事大手「高砂熱学工業」の子会社でもあります。

当記事では「ピーマックとはどのようなしくみなのか?」「家庭用エアコンやビルマルチエアコンとなにが違うのか?」「水熱源ヒートポンプエアコンはなにが凄いのか?」という点について解説していきます!
ピーマックとは?水熱源ヒートポンプエアコンのトップメーカー
ピーマック(PMAC)とは、大手空調機メーカー「日本ピーマック」が製造販売している”個別運転型水熱源ヒートポンプエアコン”のことです。

室内機にコンプレッサーと水熱交換器が搭載された水冷式パッケージエアコンで、水配管とポンプ、補助熱源・クーリングタワーだけで個別空調システムを構築することができます。
おわかり頂けるでしょうか??
”何言っているのか分からん(>o<)”という方のために、ゼロから解説していきます!
【前提知識】ヒートポンプとは?そもそもエアコンは「熱の移動装置」
最初にエアコンのしくみをおさらいしておきましょう。
そもそもエアコンとは「熱の移動装置」です。
冷房中は部屋の空気から熱を集め、集めた熱をガスに乗っけて室外機に運び、室外機で熱(排熱)を空気中に放出します。

暖房中は室外機で外気から熱を集め、集めた熱をガスに乗っけて室内機に運び、室内機で熱を空気中に放出します。

このしくみは”熱をくみ上げて移動させている”と言えます。いわば「熱のポンプ」です。だから「ヒートポンプ」と呼ばれます。
ここで注目して欲しいのが、家庭用エアコンは室内機・室外機ともに「空気と熱のやり取りをしている」点です。
冷房中は排熱を室外機から外の空気中に放出します。
暖房中は外の空気から熱を集めています。
いずれも空気と熱のやり取りをしていますね。
ピーマックのしくみ 水と熱をやり取りするヒートポンプエアコン
家庭用エアコンやビルマルチエアコン、空冷式パッケージエアコンは、空気と熱のやり取りをしています。
対して、ピーマックは水と熱のやり取りをします。
空気ではなく「水」と熱のやり取りするのがポイントです。

排熱を「水」に捨てるのが、通常のエアコンとピーマックの最大の違いです。
ピーマックには水配管を接続することが必要です。
この配管には「熱源水」という名の水(普通の水道水でOK)をポンプで循環させます。そして、ピーマックを運転させると、ピーマックは以下のような動作をします。
冷房中は部屋の空気から熱を集め、集めた熱を冷却水に放出します。

暖房中は冷却水から熱を集め、集めた熱を室内に放出します。

つまり、家庭用エアコンでは空気中に放出していた熱を、空気ではなく冷却水に放出します。これが「水熱源」と呼ばれるゆえんであり、ピーマック最大の特徴です。
水熱源ヒートポンプが必要とされる理由
「で、それのなにがいいの?」

そう思いませんか?
たしかに家庭用エアコンであれば、デメリットの方が大きいかも知れません。エアコンを運転させるのにわざわざ水の配管を設置しないといけませんので。
しかし、ビルやホテルといった大規模施設の空調では、さまざまなメリットがあります!
室外機が不要になり、設計自由度が向上

まず、室内機ごとに室外機を設置する必要がなくなります。
大型施設では何百台ものエアコンが設置されます。空冷式エアコンでは、室内機に対応する室外機を設置する必要があり、莫大な設置スペースを設けなくてはなりません。

しかし、ピーマックであれば冷却塔と補助熱源の温水ヒーターがあればOKです。
室外機が不要となり、室外機のスペースを確保する必要がなくなります。
また、水方式セントラル空調のように大型の冷凍機やボイラーを設置する必要もありません。
機械室を小型化でき、運用に携わる人やコストも削減できます。
室外機までの距離制限がない
ビルマルチエアコンには配管長の制限があります。そして一般的に配管が伸びるにつれて、冷暖房能力は低下します。
よって、空冷式のエアコンでは、室外機と室内機の距離を計算し、なるべく近いところに室外機を設置できるよう建物を設計する必要があります。

対して、ピーマックは配管で冷却水が供給されていればよいため、無限に配管を延長することが可能です。大規模な建物でも、柔軟に設計を行うことができるようになります。
冷房・暖房の同時運転ができる

ビルでは日当たりなどの影響で、部屋ごとに空調需要が大きく異なることがあります。
例えば、日当たりが強い部屋は冬でも冷房が必要になることがありますし、ホテルでは宿泊客によって好みの温度が異なることなど日常茶飯事です。
このため、冷房・暖房の同時運転が必要になることがありますが、通常のセントラル空調(二管式)やビルマルチエアコンでは冷房と暖房の同時運転はできません。
しかし、ピーマックであれば、1台ごとにコンプレッサーが搭載されているため、個別に冷房・暖房を切り替えることができます。
部屋ごとの環境にあわせて、個別に最適な空調を行うことが可能です。
排熱回収運転ができる
冷房と暖房が同時に行われた場合は、排熱回収運転が可能です。
冷房で発生した排熱は循環している熱源水に捨てられます。一方、暖房中のピーマックは熱源水から熱を吸収し、暖房に使用します。

つまり、同じ熱源水を共有している空調機どうしが、互いに熱のやりとりを行い、効率よく冷暖房を行うことができるのです。
しかも特殊な設計をする必要もありません。同じ水配管に接続されたエアコンを運転させるだけで、勝手にエアコンが排熱回収をしてくれます。非常に画期的なシステムでしょう。
再生可能エネルギーの活用も可能。地下水や工業排熱の有効利用にも使える
水熱源であるピーマックは、地下水など安定した温度の冷却水で運転することもできます。
空冷式のエアコンでは冷暖房能力は外気温に左右されますが、地下水など一定温度の冷却水を活用して、効率よく空調を行うことができます。
近年では夏の暑さが話題となることが多くなりましたが、水熱源であれば安定した冷房運転が可能となります。
年中安定した空調性能を発揮し、かつ省エネルギーに貢献してくれます。
ピーマックを用いた空調システムでは、以下の設備で構成されます。
- ピーマック本体
- 冷却塔
- 補助熱源(温水ヒーターなど)
- 冷却水ポンプ
同じ冷却水(正確には「熱源水」)回路に複数台のピーマックを接続し、ポンプで水を循環させます。こうすることで、冷房・暖房が混在した場合は排熱回収運転が可能となります。
全空調機の熱収支の結果、余剰な熱が発生した場合は、最終的に冷却塔で放熱を行います。

また、暖房時の補助熱源として、温水ヒーター(つまり「温水器」のこと)を設置しますが、あくまでヒートポンプに熱を供給するのが目的であるため、20度台の温度を維持できれば問題ありません。
冷凍機やボイラーといった大型の熱源機を用意する必要がないため、機械室のスペース削減や機械の維持コスト削減に寄与します。
まとめ
今回はあまり知られていない、けど実は多くの施設で導入されているエアコン「ピーマック(PMAC)」について解説しました!

最近では、三菱電機も水熱源ヒートポンプに力を入れています。
実は1970年代~1990年頃までは、中~小型のビルにも水熱源ヒートポンプが少なからず採用されていました。
今と違い、当時のビルマルチエアコンは配管長の制約が多く、比較的小さなビルでも水冷式が採用される事例が少なくありませんでした。
その後、ビルマルチエアコンの台頭により中・小型ビルに水熱源が採用される事例は減り、水熱源ヒートポンプは大型ビルに特化した空調と化しました。
最近ではリニューアル需要が多くなっており、ピーマック以外のメーカーも水熱源ヒートポンプエアコンに注目しているようです。とくに三菱電機はリニューアル向けの水冷式パッケージエアコンを開発し、新機種を市場に投入しています。

メーカーは違えど、仕組みはピーマックと同じです。ここ数十年、水熱源ヒートポンプといえばピーマックの独占市場でしたが、今後の動向が注目されます。
より詳しく知りたい方は、日本ピーマックの公式ホームページをチェックしてみることをおすすめします。PMACについて – 日本ピーマック株式会社

 
  
  
  
  

コメント